切らないいぼ痔の治療 ジオン注射
内痔核(いぼ痔、脱肛)の治療として、最近注目されている内痔核硬化療法がジオン注射です。従来の内痔核硬化療法では、パオスクレー(フェノール、アーモンドオイル)が使われていました。こうした薬剤には根治性がなく、一年程度の持続性ですから定期的な継続治療を受ける必要がありました。
このジオン注射治療は持続性(根治性)があることが大きな特徴となっています。これまで根治手術治療でしか治せなかった進行した内痔核(Ⅲ度)でも治療効果が期待できますし、いろいろな意味で画期的な治療法です。
注射だけですし、痛みもほとんど無いため、日帰りで治療を受けられることから、手術に代わる治療法として期待されています。
ジオン注射の効果
注射した直後から痔核へ流れ込む血液量が減り、翌日には出血が止まり、脱出の程度も軽くなります。時間の経過と共に痔核は次第に小さくなり、それに伴って引き伸ばされていたクッション部分の支持組織が元の位置に癒着・固定していきます。症状などにより個人差はありますが、ほとんどの場合、約1週間~1カ月で脱出がみられなくなります。
ジオン注射の治療方法(四段階注射法)
「四段階注射法」という特殊な手法で投与を行う必要があります。内痔核一つにつき、痔核上側の粘膜下層→痔核中央の粘膜下層→痔核中央の粘膜固有層→痔核下側の粘膜下層という順番で、計4ヵ所に注射します。
正しい場所に正確な量の薬液を注入するには技術と経験が必要であり、「四段階注射法」は日本大腸肛門病学会に所属している、痔核治療の経験が豊富で「四段階注射法」の講習を受けた医師のみが施行可能です。当院はもちろん、この基準をクリアしています。
ジオン(ALTA)とは
ALTA(Aluminum Pstassium Sulfate Hydrate Tannic Acid 読み方:アルタ)は、硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸水溶液で、製品名が「ジオン」です。これは、2005年3月に登場した硬化剤であり、内痔核に注射することで、痔核を固めてしぼませ、痔核の脱出や出血症状を改善します。
中国で以前より内痔核治療に用いられてきた明礬液(みょうばん液)に改良を加え、中国の史兆岐教授らが1971年に開発した「消痔霊」がもとになった硬化剤です。消痔霊の主な成分は硫酸アルミニウムカリウム(みょうばん)とタンニン酸(五倍子:ゴバイシ)ですが、中国伝統医学の「酸は収斂し、渋は個脱する」という理論に基づいたものとされています。
中国ではすでに30年以上の治療実績がある「消痔霊」は、1979年に中国政府の承認を受け日本にも紹介されています。 ALTAは消痔霊に含まれる添加剤の一部を日本で改良したものであり、1998年より治験が開始され、2005年に認可を受け治療ができるようになりました。
ジオン注射のメリットとデメリット
メリット
- 今までなら手術で治療する必要のあった一部の内痔核が、注射によって治療できます。
- 手術のような切除の必要がなく、痛みや出血もほとんどないので、身体的・精神的な負担が軽度で済みます。
- 手術のようにお仕事や学校を長期で休む必要がなく、治療時間も短いので、日常生活への支障が最小限で済みます。
- 健康保険などが適用される保険診療にあたるので、治療費が比較的安価で済みます。
- 別の病気のために抗凝固薬や抗血栓薬を服用中の方でも、服用を休まずに受けることができます。
デメリット
- 基本的に脱出が認められる内痔核に適応が可能ですが、脱出の程度や状態によっては手術等他の方法で治療を行う必要があると判断される場合もあります。
- 注射後の副作用として、注射箇所の痛み、排便時の出血、発熱、血圧低下、肛門部の違和感、排便がしにくいなどの症状が一時的に現れる場合があります。
- 1年後の再発率が約16%と、手術の約3%に比べてやや高い結果が報告されています。また、比較的新しい治療法なので、まだ長期といえるほどの成績が示されていません。
ジオン注射受けられない方
- 妊娠中・授乳中の方、妊娠の可能性のある方
- 小児
- 前立腺がんで、放射線治療を受けたことがある方
- 潰瘍性大腸炎の方
- 透析治療を受けている方
- 嵌頓痔核
- 外痔核
- 全身状態が不良な方
治療後について
排便
- ジオン注射での治療後、初めてとなる排便をご自宅でされることはかまいませんが、その際には5分程度でお済ませください。
- ジオン注射治療を行った当日に排便してもかまいません。
- 排便時に出血がともなう場合があります。特にジオン注射治療の1ヶ月~3ヶ月後くらいに出血する場合があります。
通院
- 日帰りでジオン注射治療を受けた際には、必ず翌日も受診してください。
- ジオン注射の治療後には副作用が起きる可能性もあるため、定期的に通院していただく必要があります。
- 副作用も含めて普段と異なるような気になる症状が現れた場合は、早急に受診して、適切な治療を受けてください。
治療費用について
ジオン注射は健康保険の適応となります
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
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日帰りジオン注射 | 約5,300 | 約10,500円 | 約15,700円 |